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エリオット・ペイジが示した勇気──トランスジェンダー俳優としての人生と信念

エリオット・ペイジが示した勇気──トランスジェンダー俳優としての人生と信念

ハリウッドにおけるLGBTQ+の表現は、長年にわたり課題とされてきた。

ある調査によれば、上位興行収入の映画100作品に登場する発話キャラクターのうち、LGBTQ+として描かれた割合は全体の約2.1%にすぎず、トランスジェンダーのキャラクターはごくわずかだったとも報告されている。

しかし近年、こうした閉塞的な状況に風穴を開ける存在が現れた。その俳優こそ、エリオット・ペイジである。

2020年、彼はトランスジェンダー男性であることを公表し、ハリウッド史上初めてアカデミー賞にノミネートされた経歴を持つ俳優となった。

その決断は単なる個人的なカミングアウトにとどまらず、エンターテインメント業界全体に変化を促す象徴的な出来事として受け止められている。

本稿では、そんなエリオット・ペイジの俳優キャリアを深堀りしたい。

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トランスジェンダー表現の変化と時代背景

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ハリウッドで描かれてきたトランスジェンダー像は、長年にわたり社会に根付いた偏見や固定観念を色濃く反映してきた。しかし、この10年で劇的な進化を遂げているといえる。

かつては、映画やドラマでトランスジェンダーのキャラクターが登場することは極めて稀だったが、2020年代に入りその存在感は確実に増してきた。

例えば、ラバーン・コックスが『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(2018)で演じたソフィア・バーセットは、トランス女性俳優がメジャー作品で主要キャラクターを演じた象徴的な例だ。

さらに、ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』で活躍したハンター・シェイファーが見せた繊細な演技も、若い世代に大きな影響を与えている。

そして、エリオット・ペイジは、オスカーにノミネートされた俳優として、自身がトランス男性であることを公に明らかにした初のハリウッドスターとなった。

また、『TIME』誌の表紙を飾ったことで、トランス男性として初めて主流メディアの「顔」となり、歴史的な一歩を刻んだ俳優とも言われている。

このように、LGBTQ+の存在が社会の表舞台に立つ機会が広がったことは、ハリウッド界のみならず世界にとっても大きな転換点を迎えているのではないだろうか。​​

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カミングアウトという決断──恐怖を超えた行動

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2020年、33歳のエリオット・ペイジはSNSを通じて自身がトランスジェンダーであることを公表した。

私はトランスであることを愛している。クィア(queer)であることを愛している

そのように綴られた声明には、長い旅路を経て辿り着いた自己肯定の喜びが溢れていたとも捉えられる。ここから、代名詞を『he/they』と定め、新たな名前エリオットを選んだ。


その決断の裏には、深い恐怖も伴っていたに違いない。

それでも、声をあげることを選んだエリオット。カミングアウトをした当時のインタビュー以下のように語っている。(*上記の動画とは別です。)

恐怖よりも重要だと感じる。それが正しいことだと、ただシンプルにそう思う

また、当時パンデミックという異例の時期が、自分を見つめる時間を与くれた要因でもあったと話す。

一人で過ごす時間がたくさんあり、無意識に避けてきた自分への問題に集中できた」と発言しており、自分自身を完全に受け入れる決断をした。

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俳優としてのキャリアと揺るがない信念

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エリオット・ペイジの俳優としての軌跡は、幼少期から始まっている。当時、10歳でカナダのテレビシリーズ『Pit Pony』に出演し、子役としてのキャリアをスタートさせた。

その後、2001年から12シーズンにわたって放送されたシットコム『トレーラー・パーク・ボーイズ』をはじめ、ドラマ『リ・ジェネシス バイオ犯罪捜査班』(2004)など注目作への出演を重ねていく。

さらに、2005年公開の映画『ハードキャンディ』では、14歳の少女を演じた姿が高く評価され、若手実力派としての地位を決定づけた。

そして、彼の名を世界に知らしめたのは、2007年に公開されたジェイソン・ライトマン監督作品『Juno/ジュノ』である。

予期せぬ妊娠に直面する10代の少女を演じたこの役で、エリオットはアカデミー賞、BAFTA、ゴールデングローブ、全米映画俳優組合賞の主演女優賞にノミネート。そして、インディペンデント・スピリット賞を受賞している。

その出演を皮切りに『X-MEN: ファイナル ディシジョン』(2006)、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(2010)や『フラットライナーズ』(2017)リメイク版など、数々の話題作への出演を果たしてきた。

現在は、Netflixのシリーズ『アンブレラ・アカデミー』で主役の一人を務めているエリオット。

同作でもトランスジェンダーとしてカミングアウトする展開が描かれ、エリオット・ペイジ自身の現実と重なり合うことでも話題を呼んだ。

トランスコミュニティへの貢献と社会活動

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現在、エリオットは俳優という影響力を生かし、トランスジェンダーの権利や尊厳を守るため、社会に向けて発信を続けている。

カミングアウトの際には、Netflixが「私たちのスーパーヒーローを誇りに思う」と公式に支持を表明し、その姿勢自体が大きな話題を呼んだ。

 
 
 
 
 
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以降、彼は約600万人のInstagramフォロワーを通じて、反トランス法案や人権侵害をめぐる問題について、自身の言葉で訴え続けている。

そうした人生の集大成とも言えるのが、2023年に刊行された回顧録『Pageboy』だ。

カナダでの幼少期からハリウッドでの成功、同性愛者として、そしてトランスジェンダーとして公に生きる決断に至るまでが記されている。

エリオットが、自身の歩みが赤裸々に綴られている一冊である。

なかでもその回顧録で記された

恥は幼い頃から骨の髄まで刷り込まれており、その古く有害な感覚を、自分の体から取り除こうと私は必死に闘ってきたShame had been drilled into my bones since I was my tiniest self, and I struggled to rid my body of that old toxic and erosive marrow)

という彼の言葉は、多くの読者の共感を呼んだ。

信念が生み出す変化──俳優の真の力

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エリオット・ペイジの存在は、いまや多くのトランスジェンダーの人々にとって、確かな希望の象徴となっているに違いない。

自分がトランスであればあるほど、より夢を見ることができ、心が広がり、花開いていく

彼が残したこの言葉は『自己を受け入れることこそが、人をどれほど自由にするのか』を表している。

俳優として貫いていくべきものは、外見やエンターテイメント業界から求められる役割ではなく、自分自身のなかにある真実ではないだろうか。

エリオットはその姿勢を生き方として示し、業界に根強く残る偏見や、ジェンダーにまつわる固定観念を打ち砕いてきた。

彼の歩みは、声を上げることの重要性を示すと同時に、多様性を受け入れることが人間性をいかに豊かにするかを証明している。

トランスジェンダーであるエリオット・ペイジ自身が、俳優として第一線に立ち続けること。

もはや、その存在が世界の希望だ。

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