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『ストレンジャー・シングス』ダスティン役のゲイテン・マタラッツォ、病気を強みとしてきた俳優キャリアと成功の裏側

『ストレンジャー・シングス』ダスティン役のゲイテン・マタラッツォ、病気を強みとしてきた俳優キャリアと成功の裏側

約8年に渡るシリーズがついに完結を迎えた『ストレンジャー・シングス』。この作品をきっかけに多くの俳優が一躍スターへの階段を駆け登った。そのなかでも、ユニークな活躍を見せたのがダスティン役のゲイテン・マタラッツォだ。

彼は鎖骨頭蓋異形成症(CCD)という稀な遺伝性疾患を持ちながら、ブロードウェイから映画まで幅広いキャリアを築いてきた。その姿は、多くの同じ疾患を持つ人々に希望を与えるだけでなく、俳優という職業に容姿の基準など存在しないことを証明している。彼のキャリアは、病気をハンデとせず向き合う強さと、その特性を武器に変えた勇気の物語である。

鎖骨頭蓋異形成症(CCD)とは?

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鎖骨頭蓋異形成症は、約100万人に1人の割合で発症する稀な遺伝性疾患で、骨や歯の発達に影響を与える病気のひとつ。主な症状としては、鎖骨の欠損または未発達、頭蓋骨の大泉門閉鎖の遅れ、そして歯の発育異常が挙げられる。マタラッツォの場合、鎖骨が両側とも低形成または欠損しているため、肩を前方で接触させるほどの過可動性がある。

歯科的な症状は特に顕著で、乳歯の脱落が遅れ、永久歯の萌出が遅延または欠如し、さらに過剰歯が歯茎の中に埋まっているケースが多い。マタラッツォは義歯を使用しており、生後から複数回の外科手術を受けてきたという。さらには「過剰歯を除去する手術は特に複雑で、適切な治療ができる歯科医を見つけることさえ困難だった」ことも明かしている。

治療法としては、頭蓋顔面外科手術、過剰歯の除去、歯列矯正、欠損歯の補綴などがあるが、CCDの完全な治癒法は存在しない。

ゲイテン・マタラッツォの俳優キャリア

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マタラッツォは2011年、わずか8歳でブロードウェイの舞台『プリシラ』にベンジャミン役として俳優デビューを果たした。

その後、2014年には名作ミュージカル『レ・ミゼラブル』でガヴローシュとプティ・ジェルヴェの役を演じるなど、ブロードウェイのインペリアル・シアターで幼少期から演技の基礎を築いてきた。

これらの舞台経験こそ、マタラッツォが後に映像作品で見せる表現力豊かな演技の土台となっている。

2015年にはテレビドラマ『THE BLACKLIST/ブラックリスト』のエピソードに出演し、映像の世界へと足を踏み入れた。そして、彼のキャリアを決定づけたのが、2016年にスタートしたNetflixのSFホラーシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。

世界を賑わせた同作品では、マタラッツォのCCDという特性こそがキャラクター造形の強みとされている。彼のリアルな疾患が、ダスティン・ヘンダーソンというキャラクターに反映されたのだ。

実際に、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン1では、ダスティンがいじめられる場面で「何度も言っただろ、歯は生えてくるんだ!鎖骨頭蓋異形成症って言うんだよ」というセリフが登場する。

『​ストレンジャー・シングス 未知の世界』での活躍と成長

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』でのマタラッツォの演技は、シーズンを重ねるごとに進化を見せていた。物語が進むにつれて、マタラッツォの演技は年齢相応の無邪気さから、喪失や罪悪感、恐怖と向き合う繊細な芝居へと深化していく。

特にシーズン5では、知性を発揮する場面が多く、初期の“ユニークでお調子者なダスティン”という印象から一転して、仲間を思いやる素直な姿や、危機の中でも冷静に状況を分析する知的な姿を見せていた。

仲間のためなら自分を犠牲にすることもいとわない勇敢さと、時折のぞかせる少年らしい不安や葛藤の揺らぎを見事なバランスで両立させており、彼の一つひとつの表情からダスティンという人物の成長を感じ取れる。 ​

さらには、スティーブ・ハリントン役(ジョー・キーリー)との掛け合いも素晴らしい。二人が並ぶシーンでは、テンポよく繰り出されるジョークや口論の中に、互いを信頼し合う“疑似兄弟”のような空気が漂う。

特に、「死ぬかもしれない恐怖」を抱えながら作戦に挑む場面では、表情が崩れて本音がにじむ瞬間の落差が生々しく、視聴者に危機のリアルさを強く意識させる。

圧倒的な量のセリフを一気にまくし立てるシーンでも、単なる早口ではなく、恐怖と焦り、仲間を守りたい衝動が滲み出ており、まさに『圧巻』と言う言葉が当てはまる演技だった。

CCDの啓発活動と社会貢献

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実は、マタラッツォは現在CCDの啓発活動に積極的に取り組んでいる。

彼は『CCDスマイルズ』という非営利団体の大使を務め、同じ疾患を持つ人々への歯科手術費用の支援や啓発活動を展開している。

保険会社が、CCDの口腔再建手術やその他の必要な外科手術を必須と見なさないことが多く、患者は高額な自己負担を強いられる課題があるという。

マタラッツォは「CCDやその他の頭蓋顔面障害を持つ人々が、口腔再建やその他の必要な手術に向けて適切な保険適用を受けることが不可欠だと思う」とCCDへの思いを明かした。

2017年11月には、マタラッツォと家族の協力のもと、CCDスマイルズへの寄付を募るクラウドファンディングが実施された。

マタラッツォの活動は、CCDという疾患の認知度向上だけでなく、同じ疾患を持つ人々が孤独を感じることなく、自分の物語を共有できる場を提供している。

ゲイテン・マタラッツォのこれからの展望

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『ストレンジャー・シングス』への出演を皮切りに、これまでも多くの作品へ出演を果たしてきたマタラッツォ。2019年には『アングリーバード2』でバッバ役の声優を務め、2022年には映画『Honor Society』でマイケル役を演じるなど、活動の幅を確実に広げている。

さらに、同年には『My Father’s Dragon』でボリス・ザ・ドラゴンの声も担当。また、Netflixのリアリティ番組『プランク・エンカウンターズ(原題)』ではホストとして活躍し、2024年からは『LEGO スター・ウォーズ/リビルド・ザ・ギャラクシー』でシグ・グリーブリング役の声優も務めている。

ちなみに音楽活動にも意欲的で、インディー・ロックバンド「ワーク・イン・プログレス」のリードシンガーとしても活動している。

2017年にはケイティ・ペリーのミュージックビデオ『スウィッシュ・スウィッシュ』にも出演し、多方面でその才能を発揮してきた。

『ストレンジャー・シングス』終了後については、A24のアクションスリラー映画『Together』でアクションスター、イコ・ウワイスと共演することが決定しており、今後の活躍も見逃せない。

病気を特性に変えた俳優の軌跡

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CCDという疾患をハンデとせず、むしろ自身の個性として受け入れて活動をしてきたマタラッツォ。外見に劣等感を感じ、多くの人が「表舞台に出たくない」と感じる状況で、マタラッツォは堂々とスクリーンに立ち、今やレッドカーペットでも自信を持って笑顔を見せている。

彼の存在は、俳優という職業に決まった容姿の基準がないことを体現しているに違いない。さらに、第23回全米映画俳優組合賞ではドラマシリーズ部門のアンサンブル賞を受賞し、第9回ショーティ賞では最優秀男優賞に輝くなど、その演技力も高く評価されてきた。

CCDを持つ人々はもちろん、さまざまな特性を持つ人々に希望を与える彼の姿勢は、エンターテインメント業界における多様性の大切さを力強く示してくれている。

マタラッツォは今後も、その才能と影響力を武器に、さらなる飛躍を遂げていくだろう。俳優は一見ネガティブだとも思われる人間的特徴を全て生かすことができる。

ゲイテン・マタラッツォの俳優キャリアは、多くの俳優の背中を押してくれるものだろう。

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