長年にわたり、その容姿からリリー・コリンズがファンの間でキャスティングされてきたオードリー・ヘプバーンの伝記映画。しかし、ついに発表された映画『Dinner With Audrey』の主演キャストは、多くの予想を裏切るものだった。
今回、ハリウッドのアイコン、オードリー・ヘプバーン役を射止めたのは、ニュージーランド出身の若手女優トーマシン・マッケンジー(Thomasin McKenzie)だ。マッケンジーの起用は、単なる容姿の類似を超えた、深い演技力への期待を示すものと言えるだろう。
トーマシン・マッケンジーの魅力に迫る
トーマシン・マッケンジーという名前を聞いて、ピンとこない人もいるかもしれない。だが、彼女はすでに数々の話題作でその才能を開花させている。
特に注目すべきは、アカデミー賞受賞作『ジョジョ・ラビット』(2019)で、ナチス政権下で隠れ住む少女エルサを見事に演じきったことだろう。あの作品で演じた繊細で芯の強い少女像は、多くの観客の涙を誘った。また、ホラー映画の話題作『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)での姿も記憶に新しい。都会に翻弄される主人公を見事に演じ、その表現力も高く評価されている。
世間からは「トーマシン・マッケンジーがかわいい…」と騒がれるほど清楚な雰囲気と、芯のある瞳を持つ彼女。まさに彼女の持つどこか儚げでソフトな魅力は、ヘプバーンの持つ気品と相通じる部分があるだろう。
ちなみに、マッケンジーの身長は約160cmと公表されている。ヘプバーンも小柄な体躯ながらスクリーンで巨大な存在感を放ったように、マッケンジーもそのサイズを超えたオーラで観客を魅了してくれるはずだ。
映画『Dinner With Audrey』が描くのは…40年の友情
新作映画『Dinner With Audrey』が焦点を当てるのは、ヘプバーンの華やかなキャリアそのものではない。描かれるのは、ヘプバーンとフランスの偉大なファッションデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィ伯爵との40年にわたる友情だ。
物語は、パリでの「魔法のような一夜の夕食」を起点に展開される。この出会いが、映画史に残る数々の衣装を生み出す長期的なコラボレーションのきっかけとなった。
-
『ティファニーで朝食を』の有名な黒いドレス
-
『パリの恋人』
-
『シャレード』
-
『麗しのサブリナ』
これら全て、ヘプバーンのオードリー・ヘプバーン 代表作を彩る衣装は、ジバンシィとの共同作業の賜物である。デザイナーのジバンシィ役には、アンセル・エルゴートがキャスティングされており、二人の化学反応にも期待が高まる。
映画『Dinner With Audrey』オードリー・ヘプバーンの軌跡
オードリー・ヘプバーンの年表を振り返ると、1950年代から60年代にかけてが彼女の全盛期だったことがわかる。『ローマの休日』(1953年)でアカデミー主演女優賞を受賞し、一躍トップスターの仲間入りを果たした彼女は、その後も立て続けにヒット作に出演。エレガントで知的、それでいて親しみやすい魅力は、世界中の人々を魅了した。
晩年のオードリー・ヘプバーンは、女優業から距離を置き、ユニセフ親善大使として人道支援活動に力を注いだ。アフリカやアジアの子どもたちのために奔走する姿は、スクリーンでの優雅な姿とはまた違った、彼女の真の美しさを示していた。
1993年1月20日、オードリー・ヘプバーンは盲腸癌により63歳でこの世を去ることになる。彼女の死去は世界中で悲しみをもって報じられた。今でも彼女の映画やDVDは根強い人気を誇り、新しい世代のファンが生まれ続けている。
ジバンシィもまた、1995年にファッション界から引退後、『To Audrey with Love』という本を出版。彼女へのファッションスケッチを集めたこの一冊は、二人の絆の深さを物語っている。ジバンシィは生前、オードリーを「妹でありミューズ」と表現していた。彼は2018年に91歳で亡くなるまで、彼女への思いを大切にし続けた。
映画『Dinner With Audrey』注目の製作陣とキャスト
監督を務めるのは、『パーム・ロイヤル』や『デッド・トゥ・ミー』で知られるエイブ・シルヴィア。脚本は『クラウズ〜雲の彼方へ〜』のカーラ・ホールデンが担当する。
ジバンシィ役には、『ベイビー・ドライバー』や『ウエスト・サイド・ストーリー』で知られるアンセル・エルゴートが起用された。さらに、2度のオスカーノミネート経験を持つマイケル・シャノンもキャストに加わる可能性があるという。
ファッションと映画、友情とクリエイティビティ。『Dinner With Audrey』は、単なる伝記映画の枠を超えて、創造的なパートナーシップの本質を描く作品になりそうだ。
トーマシン・マッケンジーがどのようにオードリー・ヘプバーンを演じるのか。その繊細な演技力が、伝説の女優の内面をどう表現するのか。公開が待ち遠しい一本である。
オードリー・ヘプバーンという存在は、没後30年以上が経った今も色褪せることがない。むしろ、時代を経るごとに彼女の魅力は新たな輝きを放っているように思える。この新作映画が、また新しい世代に彼女の物語を届けてくれることを期待したい。



コメント